仮面ライダー鎧武総評

 全体を通した感想としては、最初は少々モタついたけど、最終的には面白い作品になったという印象です。
 開始当初のポケモンバトルな状況設定や、コミカルなノリの演出とかは、どうにもついていけなかったんですが、少しづつ明かされていくユグドラシルの暗躍や陰謀の影が匂わす不吉な雰囲気には惹きつけられるものがありました。
 後に明かされる、人類60億の抹殺計画といった設定には具体性的な計画性があってリアルに感じました。

 結末も独特だったと思います。。
 最後の決戦の相手が共に闘ってきた仮面ライダーの一人。
 玩具の販促キャラとして売り出していたメンバーを、最後に敵にして倒してるあたり、かなりヒーロー番組としては冒険してると思います。
 それも、悪落ちした結果というのでないのがミソですね。当初からのキャラクター像を貫徹させた結果のラスボス化であって見てる側としても納得の展開です。
 捻くれた奴でしたが最後はいい人でしたという安直なセオリーに乗らなかったのは素晴らしいことです。

 人類の世界を侵食する「悪の力」として描かれたヘルヘイムの力を受け入れ、宇宙の果てに新たな世界を創造するため旅立つという終わりも、ひねりが効いたいい結末ですね。
 人類を脅かす力は悪として、力で排除する傾向の多いヒーローもので、その力を否定せず、また世界その物を傷つける道も選ばない。
 1年を通して見続けた主人公の選んだ道として納得の行く選択でした。

 思う所としては、初期の展開に遅さがあるものの、終盤の畳み掛けは実に秀逸で、目が離せないものでした。
 だから、もっと話をつめて、25話下手すりゃ13話ぐらいの話数が適正だったのかもしれないとも思います。

 個人的に最後の方でどうなのと思った部分としては、湊耀子の最後についてです。

 主と定めた戒斗を守る殉死という形はまあいいとして、爆弾によるテロ死という形はどうでしょう?
 と言うより仮面ライダー、もっと広義に”超人”という枠組みの存在が爆殺狙撃毒殺といった、暗殺的な方法で倒せるような存在であっていいのかという問題です。
 ヒーロー達に辛酸を舐めさせられている悪の組織が、人間体を狙った地味だけど効果的と思われる暗殺という方法で攻撃を仕掛けないのは、変身による対応力やヒーロー達が持つ特殊能力が、そういった攻撃にも対応できるから通用しないのだという不文律が有るものではないでしょうか。
 だから、愚直でも正面決戦しかない状況が標準となるわけで。
 これは、現実の白兵戦では極めて有効な組み付きからの関節技という戦法を使う存在がいないのと同じです。
 「絵面が地味になるから」ではなく、なんとなく効かない理屈が存在するから打撃戦に終始する形になるのだろうと勝手に納得する部分があるのと同様、野暮なツッコミを成り立たせない為にも守るべき部分であるという気がしました。
 まあ、今回の状況は近距離の爆破に加えて、高層ビルからの落下という限界を超えたダメージによる事故死に近い形と解釈するべき所でしょうか。

 終了後に振り返って気になった所としては、初期において、ミッチが紘太をなぜ、あれほど全面的に慕っていたのかについて何の説明もなかったことですね。
 初のクローズアップ時に見せたミッチはエリート意識を表し、他者との壁を作る言動をしていました。
 あれが、世間に対して見せる彼の一面だとすると、ダンスチームの仲間にだけは、本当の自分の姿を見せるようになったのには、なにか切っ掛けとなる出来事があったのではないかと思っていました。
 そしてその出来事に紘太と舞が深く関わっていたから、二人を特別慕っていたのではないかと。
 50話もあればそういうエピソードの一幕も紹介されるかと思ってたんですが結局わからずじまいでした。
 エリートの仮面を被り始める前からの幼馴染という可能性もありますが、二人と特別関わりのある出来事があったという設定のほうがよりドラマチックなのでそちらを期待していました。

 結果として鎧武は、目的としていた平成作品初期のような、重い展開のストーリーへの回帰と斬新な作風というコンセプトを果たした作品といえると思います
 流石は、虚淵玄、そしてニトロプラスといった所でしょうか。
 冬の映画にまだ出番はありますが、本編がかなりしっかりした形で終わった作品だけに単純なファンサービスの映画として楽しめそうです。
 紘太の出番はどんなものでしょう。最終話のような真打ち登場といった形が一番しっくりくる出方のような気もしますが、最後の活躍の場としては出番が少なくなるでしょうか。
 がっつり話に絡んで欲しい所ですが、イーノックでない状態でお願いしたいです。
 真面目にやってるのは分かるんですがどうにも笑えてしまうので。

 鎧武制作もそこらで一つ大きな更新をぶつけたい所ですね。

 そして、明日はいよいよドライブ始まります。
 鎧武がかなり奇をてらった分、こちらは話的にはかなり王道になるのではないでしょうか。
 脚本は、仮面ライダーW・キョウリュウジャーの三条陸ですから、安定した内容を期待できそうです。

 ドライブについても、鎧武同様共同制作という形で制作をしていこうと思います。
 制作のモチベーションは作品の面白さに比例するものなので、心沸き立つものを期待します。
 そして、鎧武制作も冬の映画公開に向けて、完結の余韻を忘れないようにしながら継続させていこうと思います。